性格の悪そうなBLOG

いちいち長いですが中身は特にないです。

BASE BALL BEARのアルバムを聴き返したのでレビューを書いた。(前編)

突然ですが、BASE BALL BEARの全フルアルバムを聴き返したらとても楽しくって思いついた事をシルバーウィークの半分を費やして全部書き出していったらルーズリーフ26ページに及んだ。

折角なのでその26ページを何とか読めるように色々な書き方で複数回に渡ってまとめてみたいと思います。
短期集中連載?の第一回として、今回は各アルバムのレビューを書く事で、BASE BALL BEAR(以下BBB)というバンドの歩みを僕の主観で振り返ってみたいと思います。早速どうぞ。


HIGH COLOR TIME(2005年)オススメ度:☆
ミニアルバム、シングルを経た彼らの記念すべき1stフルアルバム。
ナンバーガール直系と飽きる程に言われてきただろうけれど、彼らから受け継いだキメの文化やカッティング過剰でとても清々しい作品。
歌詞においても都市や夕方など特定の単語を多用するスタイルなどが近しい。
BBBに重要な要素としてはボーカル小出祐介による文学青年の脳内直送の女の子描写があると思うので、いくつか好きな歌詞をいくつかピックアップしてその僕なりに魅力を感じるポイントを紹介していきたい。
「透けた君が体を通り抜け彼方に溶ける 何も知らないふりして笑ってた俺は確かに居た 笑い方を忘れた今は騒々に身を任すだけ」(April Mairage)
「夏の日が螺旋階段を下りて終わりを告げたから オセロいたいに区切られた街は少し裏返ってる」(海になりたい)
「君色で縁取られた画を飾り付ける場所がないから 溢れてしまった外は今日も賑やかで ハッピーエンド捨ててある」(月色の街)
ファンク寄りのカッティングも軽快に上記の様な恋愛描写がなされるのだけれど、とにかく失恋している気がして仕方ない。
文学青年が失恋を何とか綺麗な思い出に昇華しようと詩的に表現しようとしている生々しさがゾクゾクして僕は大好きだ。
どうしてこんなに失恋感が増すのだろうと思って聴いていると、
「曖昧に変わる思い出の袖を掴んで離さない俺は思い出主義者」(Aimai Memories)
という表現があり妙に納得がいった。曖昧に変わる思い出というのは「自分の都合で綺麗な部分を切り取った思い出」で、その思い出に浸ることで失恋そのものを直視していない様にも読める。その事実の外側をぐるっと遠回りしている姿が失恋感を増幅させるのだと思った。
この思い出主義的な視点は後の作品にも強烈に通じており、その自分への葛藤でコンセプトアルバムが爆誕してしまう事になるのだけれど、それはまた後述することにする。
アルバムの印象としては小出節とも言える文学暴走系フレーズがナンバーガールのキメくらいの頻度で詰め込まれているもので遠目に見ると「文学青年」なのだけれど寄っていって読んでみると詩的な言葉の強さが先走っていてその他の部分と連携が取れていない。
江戸川乱歩ラノベの狭間を行き来するような作品だと思う。

 

バンドBについて(2006年)オススメ度:☆☆
メジャーに殴り込みをかける自己紹介的なミニアルバムで、僕はこの作品からリアルタイムでBBBを聴き続けている。
前作HIGH COLOR TIMEのささくれ立ったギターに比べるとかなりブラッシュアップされていて間口が広い音になっている。
クリアな鳴り方になった分、ギター湯浅将平のファンキーかつノスタルジックなギターが余すことなく猛威を振るっていて最高。
同じく猛威を振るっているのがボーカル小出氏の思い出主義なので、その辺ちょっと見て貰っていいですかね。
「思い出主義に走って『今が昔』状態に 夕日で描く肖像画 なんて寂しい色使い」「イマジネイション全開にして 君の色が蘇っていく」(極彩色イマジネイション)
「彼氏彼女の関係 なりたいと思っていた俺も、消えていく 一掴みの思い出を道連れに」(彼氏彼女の関係)
全国100万人の思い出主義ファンの皆さま歓喜のフレーズですね。
失恋からの自分にとって良かった部分を脳内再生で振り返るというのは誰しも通る道なのかも知れないけれど、主義にまで据えてしまえるのにはやはり才能が必要なのだと思い知らされる。
僕がこの作品で一番好きな曲である「サテライトタウンにて」では、片思いのままでここまで書いておりますご確認下さい。
「舞い上がる君のページ 渦を巻いて 眼で追うだけで決して掴もうとはしなかった」「手が届かないくらい吹き飛べ どうせなら」(サテライトタウンにて)
冷めた自分を演出しつつ、高嶺の花になってくれたら片思いでいられるのに、とも取れる表現に己の中学時代を思い出す男子も沢山いるのではないだろうか。
20歳そこらの若者が拗らせているのか冷静に振り返れているのかここまで渦巻いている歌詞を生み出すというのが初めて聴いた僕にとっては脅威だった。
「彼氏彼女の関係」では20歳そこらで「飛行機が上空に一文字書き割れた夏の日」という文章で失恋を表現しているのだ。頭おかしい。

こんな調子なので、僕の中で小出氏は「小出先生」であり、新譜が出る度に音より先に「小出先生の新作が出たぞ!!」と歌詞カードを読みながら拗らせていた自分を思い返して床をゴロゴロ転がるのである。

Base Ball Bear - 彼氏彼女の関係 (新しい関係ver ) - YouTube


C(2006年)オススメ度:☆☆☆
メジャー1stフルアルバム。「バンドBのすべて」からも一部引き継いで圧倒的なコンプレックス兼女性観の絨毯爆撃なのであります。
音的にも更に洗練されており、「バンドBのすべて」にも収録された「CRAZY FOR YOUの季節」は完璧こっちのバージョンで聴くべきだと100回でも200回でも言ってやりたいですね。サビの小出氏の声に掛けられた微妙なエコーが悶々としてて官能的で最高。
実は一度感想文を書いているのでこちらもよろしくどうぞ。今更レビュー:BaseBallBear「C」 - 性格の悪そうなBLOG

「CRAZY FOR YOUの季節」で登場する「海みたいな彼女が笑った」というフレーズに代表される様にBBBの作品には多くの海やプールが登場し、またそこでは恋愛について歌われる事が多い。

母なる海的にも取れるモチーフなのだけれど、どうにも多面的でミステリアスな方に重きを置いている気がする。
それも彼女本人がミステリアスというよりは主人公が理想の女性像ありきで近付く勇気もないのに積極的に讃えている事から生まれてしまった距離感による謎だと感じる。
例えば「GIRL FRIEND」では、「君の表情、小悪魔のそれ 予想通り 命取り」との『君』の表情に対して「透明の笑顔をみせて いけない笑顔をみせて」と歌っている。
1曲通して主人公の希望があの手この手で歌われていて、それを一言で例えているのが「透明の笑顔」だと思う。透明な、だと自分に向いている笑顔に読める所を透明の、で来る。そんな笑顔が実際には存在しない可能性もあり、自分だけに向けられる笑顔が欲しいという表現に思える。
思い出主義は相変わらず全開で「YOU'RE MY SUNSHINEのすべて」では「雷鳴りだした夜空 ギリギリを匂わせたあなたと似ている 抱きしめた瞬間に世界の終わりを見せる あなたと似ている」と歌う。思い出の下準備に余念のなさを見せる。これがプロか。
続く「GIRL OF ARMS」では終わった恋愛を幻と例えてしまう自己防衛にて自己分析の放棄。最高の女々しさである。
そう受け取った瞬間に、これか!と身体に電気が走った。僕は根本的にBBBやT.M.Rなど女々しい男が好きなのだ。間違いない。
「STAND BY ME」で「やり残したことが思いつかない 完璧な少女に逢えたから」と歌う一方で「髪を耳にかけ眼を細めた あなたの瞳に映る 俺を見つめる」と女性そのものよりも自分の理想と出会えたと思っている自分自身に酔っている気がしてならない。
理想主義な所は複数の楽曲に登場する黒い髪に対する称賛の数々からも見て取れる。人は見かけが何割だろうか。
黒髪で気持ちが見えないのは僕の責任じゃなくて謎めいた魅力がある性格だから、という透ける拘りからイメージするにこのアルバムを男性に例えると好みのタイプは水原希子さんや橋本愛さんではないだろうか。
結局関係としては成就せずに破綻するのでラストトラック「SHE IS BACK」では「生きる君が暮らす 海の様なこの都市で 笑え 淡い想いを ロマンチックで何が悪い」と完全に悲劇の主人公で本当の彼女には見向きもしない始末。最高じゃないか。
「思い出はNEVER DIE」何言ってんでしょうね。
僕が彼女でも間違いなく3日で別れると思いますね。面倒臭いもん。

Base Ball Bear - CRAZY FOR YOUの季節 - YouTube


十七歳(2008年)オススメ度:☆☆☆☆

タイトルからしてティーンに突き刺さるかと思いきや、大人の涙腺直撃必至の名盤。
楽曲的にもキラキラしたアニメソングからムーディーな艶っぽい楽曲まで高いクオリティながら17歳へ17歳だった人からのエールがぎっしりで桐嶋部活辞めるってよと同じ泣き方をしてしまう傑作。
「ドラマチック」「抱きしめたい」「愛してる」「真夏の真実」など聴けば聴くほど面白い曲ばかり。これが立て続けに発売されたシングルだなんて意味不明。
「17才」のほの暗い感情を全て肯定し、敢えてそれを育んでしまいそうな夏を持ち出して鼓舞し、「ドラマチック」へ繋ぐ流れは熱くなってしまう。
実年齢がこれまで背伸びしていた世界観に近づいてきた分、恋愛曲の色気が凄まじくなっており、抱きしめたいと連呼する「抱きしめたい」では詩的に飾り付けていた言葉に加えて「いやらしめな意味でも綺麗な意味でも 突然でも構わないかい?抱きしめたい」とストレートに言える、欲がありつつも自分の潔白さが優先だった頃とは比べ物にならない大人っぽさと化している。
BBBの様なバンドは漫画みたいに季節は巡っても歳は取らない様なバンドでいるという選択肢もある中でこれまでの魅力をきちんと年相応に成長させていく素敵なバンドだなとこの曲を聴いて感じた。
一方でヘヴンズドアー・ガールズの「屋上で試してる 飛び降り占いは いつだって失敗で Oh 涙流すロンリーガール」「風に投げた手紙は神様へのラヴレター 殺気立った君から逃げる幸せ」「悲しみのない空へ 飛べそうな衝動が 今を支えてる そんな不幸せ」と深い悲しみと傷を今負っている女の子へ優しく語り掛ける様に歌う。「青い春、虚無」ではそんな辛い日々はどうしたってやって来る事を知りながら「暗がり 走り抜けろ そう訳もなく空っぽの季節だけど それが青い春だ」と17歳が生きていてくれる事を強く呼びかける。
また、大人のふがいなさを17歳に見せて先に絶望だけでないことをユーモアを交えて見せる様に配された「愛してる」の愛してるの連呼でフラれる大人による「愛は形のないものだから 似ているものを そう僕の心をあげる」というフレーズの暴走っぷりにため息が漏れる。
元恋人と電車に乗り合わせた「SEVENTEEN ROMANCE」の自分だけでなく相手にも未練がある前提の思考が何とも切ないし、「FUTATSU NO SEKAI」の別の世界があればそっちではうまく行っていたのではないかという文学青年の拗らせも未だ完治していない姿を見せつける。
「真夏の真実」で深夜のプールが登場する様に、今作でも水際の小出氏の気の強さは健在。水属性のポケモンかな?
そんな中で異質なのが「協奏曲」で、これがウエディングソング。ろくに恋愛が成就した曲もないのに完璧な精度のソレを世に放つ発想のぶっ飛び方。邪推すれば「正直に言えない派 ハズカシウインクスナイパー」と歌われた男を手玉に取りながら実は純情な「WINK SNIPER」の理想の結婚像という見方も出来る。
ただ、個人的にはそこで終わらずに「気付いてほしい」というラストチューンが存在する事で「こんな未来も君次第で待ってるはずだ」と苦しんでいる17歳への壮大なメッセージではないかと感じた。
「気付いてほしい」でスカっぽい明るい導入とは裏腹に自分の存在を切々と訴える17歳が描かれ、ここまで順に聴いていると一人でもそんな子が救われて欲しい気持ちになるし、そこから1曲目「17才」に戻ると倍泣けてくる。

Base Ball Bear - 愛してる - YouTube

 

とてつもなく長いのでとりあえず今回はここまで。

第二回へ続く。

 

またー。