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性格の悪そうなBLOG

いちいち長いですが中身は特にないです。

BASE BALL BEARのアルバムを聴き返したのでレビューを書いた。(後編)

前回に引き続き、第二回である今回はレビューの後編をお送りしますんで、さっさと参りましょう。長くてごめんね。

 

(WHAT IS THE)LOVE&POP?(2009年)オススメ度:☆☆☆
C以前のササクレだったシビアな一面を音に内包した鋭い楽曲が多い1枚。
これまで避けて来たのでは、と思えるほどに詞と曲が両方シリアスな楽曲が少なかったBBBが真っ向から表現し切った良作。
「孤独という名の風邪 19で終わりじゃないのかい?」「積み上げた心の壁が 高すぎてよくわかんない おいくらか払うから 認めてくれないか」と歌う「Stairway Generation」や「制服のあの子が泣いてた 誰もいない観覧車の中」と歌う「SOSOS」では、一見観覧車の様に明るいとされる場所に属しながらも仲間を感じさせない、SNS型の表面化し辛い葛藤に苛まれている姿が描かれている。
その2曲の日常の中、「何かが変わる気がした 何も変わらぬ朝に いつもより少し良い目覚めだった」と少しずつ浮上していく感情を歌う「changes」や「神様になったらどうする? 変えたいものばかりでも 泣き笑いのいっぱい詰まった人生を」と神様視点でこれまでを肯定する「神々LOOKS YOU」が支えるように配されている。
他方、「BREEZE GIRL」「LOVE MATHEMATICS」「レモンスカッシュ感覚」というBBB伝統芸能と呼べる文学拗らせ大爆発が起こっていてとんでもないボリュームになっている。これらはちょっと小出節の宝石箱や、血糖値振り切ってぶっ倒れそうな濃度なので各自で是非是非チェックを入れて頂きたい所。マジで凄い。書き出せないくらい小出節の嵐でございます。すき!
小出氏の日記を読むと、カロリーが高い楽曲みたいな言い方をする事が多く、どんな曲が彼にとってソレに当たるのか解らないものの、個人的にはこんな曲のことだと思っており、日記に登場すると「これかな?」と妄想で1~2時間くらいは平気で潰せる。
脱線したけれど、特に前半の流れを汲んだラストチューン「ラブ&ポップ」はそんな己への葛藤に対して「一人だけの僕は一人だけの僕 見つめている 許しあっている」と自分を許すことを説いている。
自分に優しくなって立ち上がれそうになる一方でまさかのシークレットトラック(ブランクで優しさを噛みしめるとより衝撃的になる)の泣けるギターのイントロが沁みる様に鳴り、「絶望に飲まれたとかそんなんじゃない 暗がりに気付いただけ ただそれだけなのに 悲しくも寂しくもないが 虚しい」と心の奥底にまだ泣いている自分がいること忘れないでと投げかける様に歌われてアルバムが終わる。「十七歳」で描かれた救いは外に向いたものだったのに対し、今作では自分に向けた作品であるのでどれだけ励ましても心のどこかにまだ自分が嫌な自分がいるという事実から目を逸らせないリアルさがある。
毎度思うのだけれど、こういう1枚の流れをタイアップ楽曲含めて組み立てられる所が恐ろしいし、曲単位で聴くのが主流になった音楽界でより破壊力を持って欲しいと願ってしまう。

Base Ball Bear - Stairway Generation - YouTube



CYPRESS GIRLS / DETECTIVE BOYS(2010年)オススメ度:☆☆
2枚のミニアルバムで1枚の世界観を描いた意欲作。3.5thと位置づけられている事に加え、これまでの流れとは全く別のところにあるスピンオフ感というか、劇場版BBBと言った感じ。楽曲的にもブラックミュージックにグッと寄ったファンク、強烈なDUBナンバー、ためらいなく難解な構成も飛び出す作品。
テーマを浮き彫りにするのではなく、ストーリーを構成する要素としての楽曲の様な感触でそういった意味では「HIGH COLOR TIME」に近いとも言える。
前半の「CYPRESS GIRLS」はCYPRESS(糸杉=棺などの材料で喪の象徴とされる)と称される女の子を描き出す様に各楽曲でキーワードが数珠繋ぎにになっている。ただCYPRESS GIRL本人を描いているというよりも姿を消した彼女を探すDETECTIVE BOYの心情を描いている。
後半のDETECTIVE BOYでこの2枚の作品がこれまでにも描かれてきたある世界観のスケール拡張版である事が明らかになって衝撃を受ける。1曲で描いてたのをここまで2枚のミニアルバムに仕立てあげるか。ネタバレになってしまうのであまり詳しく言えない、そんな気持ちになってしまうという意味でも劇場版BBBと呼べる作品。
聴くなら是非セットで、歌詞カードがっつり読みながらどうぞ。

Base Ball Bear - 十字架You and I - YouTube



新呼吸(2011年)オススメ度:☆☆☆☆
楽曲的には3.5thでやりたい事を盛大に実現したのかそれ以前ともまた違うシンプルに洗練された様な印象。
過剰にポップでも無ければ過剰に鋭い訳でもないが、貫禄すら感じるロックに仕上がっているものの、アルバムに一貫する世界観は「(WHAT IS THE)LOVE&POP?」の孤独と葛藤を引き継いでいて地続き感がある。
その中で転校生だった君が忘れられないという楽曲が何故かサンバ調だったりと「ここでそれ?」的な謎の面白さも健在。
毎日が繰り返しで、それでも確実に時間が進んでいることを歌う「深朝」から始まるアルバムは、前作の自問自答がより複雑になって「これが探していた自分らしさか?というループ」と自分を見失ってしまう「ダビングデイズ」を経て、学生時代の意味も根拠もなく楽しかった特別さを懐かしむ「school zone」と「転校生」で全編思い出を歌う事で言葉として出さずに思い出主義っぷりを発揮していく。現実は「夕方の海に漂う 幽霊船になった気分 すれ違う豪華客船 その虚しさも知る」(スローモーションをもう一度)で、「君のことを思い出す そのたび ここにいる僕はもう ただのダミー」とどんどん思い出に逃避していく。
「大切なものだけが大切ならいいのに」と言いながら失恋をキラキラした爽やかな世界に留め、現実をもがきながら突き進む「Tabibito In The Dark」「ヒカリナ」、別れを肯定する「夜空1/2」で自分に折り合いをつけながらも疲れて部屋に帰れば独りの自分を思い知る「kokoro no synthesizer」を経て、「yoakemae」で「テレビの光に看取られて 僕の昨日が息絶える あたたかい寂しさを棄てて 冷たいはじまりを連れていく」と自分を甘やかしてくれる孤独や思い出を捨てて生まれ変わる決断をする。
夜の闇と静けさが孤独の肯定でありそこに依存していた思い出主義の自分を照らす朝が怖い、それが前作から続いてきた葛藤の正体だと気付いた主人公は「新呼吸」で「夜明けの住宅街 決まって出くわすよ 時間かけて磨いた 思い出の化け物」と今の苦悩が深いほど美化されてしまう思い出と決別する為に深呼吸をする。
思い出主義との決別を果たす為の強烈なコンセプトアルバムでまるでゲド戦記みたいだなと思ってしまった。
今作ではこれまでに見られた「彼女」に過剰に熱をあげる自分がいない。それだけ自分と向き合っている姿がやっぱりゲド戦記だしはてしない物語だなと、狭い世界が描かれているのに感じてしまった。

Base Ball Bear - short hair - YouTube

 

二十九歳(2014年)オススメ度:☆☆☆☆☆
抜群の安定、ここまで来るともう演奏の派手さでアピールせずともオリジナルに成り得るのかという衝撃。
GRAPEVINEなんかもそうだけど、スタジオアーティストの化け物みたいな個をあまり出さない演奏でも凄みがあるバンドがずっと続いているというのは素晴らしいなと何故か思ってしまう1枚。
最新作が最高傑作、それも聴き手の思い出補正を全部ぶっこんでも今作が最高だと思えるのが最高。
自分の内面と向き合った前作から、今度は社会と折り合いをつけていく、外にしっかり向いていく過程が1枚を通して描かれている。
「空き箱を開けて閉めて 何もないって解ってるけど まだ知りたい知りたいよ」と足りない経験値をショートカットして都合よく得たいを思ってしまう「何才」から始まって、「屋上で寝転んで夢を語った僕らは 貯金と精神切り崩しながらもがいてる」と日常にアニメ化希望出来る程のドラマチックさを求めながらも現実を直視している「ファンファーレがきこえる」で毎日あくせく働いている一方、美容師、モデル、医者を目指していた地元の知り合いが「みんなみんな幽霊になった」と諦めてしまった姿を目の当たりにして社会の残酷さを思い知る「Ghost Town」、アイドルに向けた消費者視点の「yellow」で二十九歳のドルオタの英雄思考が爆発する痛さ、そんなに好きじゃなかったと結婚を前提に付き合っているつもりだった彼女にあっさりフラれる「そんなに好きじゃなかった」など世知辛さが続く続く。
それでも「明日も頑張ろう・・・」で終わる辺りに責任感と次を探そうという意欲がこもっていて安心する。
他者と自分の間でどちらが間違いなのか揺れ動く「方舟」、そんな人生が続いていくことをちゃんと解ってると歌う「The End」、自分が思い悩む様に他の人にも同じ様に物語があって揺れているのだろうかと歌う「スクランブル」など、社会を構成している自分以外の人たちに眼が向いている。
「ほとんど忘れ たくさん失う でも、青い君は美しくなる」と思い出がチラつく「PERFECT BLUE」では、失った彼女の思い出が綺麗になっていく一方で自分は生き続け変わっていかなければならないと歌い、そこへ行けない、思い出に頼るとまた思い出の中で生きてしまうからと「光蘇」で決別する。
そこから地続きで始まる「魔王」は2曲が対になっているロックオペラ。「光射すあの丘に 旗を立てた彼のように なりたいでもなれない それじゃ、僕じゃないから」と自分の出来る事、自分のしたい事をしっかり持って立っている姿が滅茶苦茶泣ける。アニメ化希望!アニメ化希望!と泣いてしまった。
最後の「カナリア」でファンタジーチックに自分を鼓舞して来た自分を照れくさそうに自虐気味に笑いながらも「あっという間の日々はつづく」毎日の中に救われる瞬間は確かにあるとしっかり外に目が向いている1曲で幕を下ろす。
個人的に流れとしては特に「PERFECT BLUE」「光蘇」「魔王」がハイライトなのだけれど、1枚通してドラマの様で、丁度真ん中あたりにあるRHYMESTERとの「The Cut」が最高に面白いCMみたいに効いてて完璧な特番感。
アルバムとして完璧な1枚で、ずっと内面を描いてきたBBBがここまでしっかり外側を描いてしまったので、今後どんな作品がリリースされるか全く予想がつかないのがドキドキする。
2015年9月現在、迫ってきているツアーは新作アルバムのツアーになる事が発表されているのでたまらなく楽しみにしながら僕も一生懸命社会人しようと思う次第。

Base Ball Bear - そんなに好きじゃなかった - YouTube

これにてレビュー終了!お疲れさまでした。

次回、第三回では小出氏が紡ぐ歌詞の傾向と名フレーズ集をお送り致します !


またー。