性格の悪そうなBLOG

いちいち長いですが中身は特にないです。

今更レビュー:BaseBallBear「C」

ベボベと言えばTUBEばりに夏感があるのだけれど、こっちの夏は埼玉の住宅地にある図書館の庭で白いシャツに汗染み作りながら夏目漱石読みながら蒸れるヘッドホンでナンバガスーパーカー聴いて、いつも自習室にいるあの娘にいつか話し掛けるぞ、と思いつつ夏休みあと3日で終わっちゃうよ的な夏。
学校ではクラス委員なんかやってるけどクラスのカーストではどうしても中の下。周りの友達はアニメオタクだったり映画オタク。自分はオタクじゃないのにな、と思いつつ日々を過ごす感覚。
三ツ矢サイダー染みるぜぇ。

2006年に発売されたこの「C」というアルバムは夏休みの講習や部活に出て来る時のソワソワした気持ちがそのままアルバムになった様な傑作だと思う。
ベボベと言えば完全に同世代なのに出て来た時から完全に王道。若手バンドが変拍子でクールだろうが関係なく、ナンバガのギターとキメの文化とスーパーカーの清涼感を継承した根っからマジメなバンドという印象のままで今に至る。
何このブレなさ。メジャーになるべくして生まれた教科書的なバンドだと思うのですよ。いきなり敬語。ですよ。

のっけの「CRAZY FOR YOUの季節」はミニアルバムの頃よりも爽やかでグイグイくる印象。1stフルアルバムだけれど完璧に計算された迫り来る夏のワクワクドキドキアレンジ。ミニアルバムを経ていると言え確信犯ぶりが目立つ「お、恐ろしい子...!」な一曲。
女の子と夏と言えばベボベでしょう?みたいな名刺代わりな曲がズラリ。
17歳を神格化する歪んでいるのに純真無垢な異性と接するのが苦手な子の為の音楽。「GIRL FRIEND」なんかを聴いていると第三者的に心配してしまう程のイノセンス
こういう捻くれた内向さに夏をガツンとぶつける所が他の青白い文系ロック(それはそれで心底好きです)と大きく違う所。あ、この子も汗とかかくんだ。汗腺無いと思ってた、にしない所がまた思春期っぽくて良い。ガリガリくんでも食ってろ的な。

先に述べたキメ文化をしっかり継承しているんだけれど、どの曲も根っからのマジメにキラキラポップでキメまで大人しく地味。だけど良さを感じる。繰り返して使いたくなる流行語生み出すタイプと話芸でジワジワ人気を掴むタイプの芸人さんなら楽曲は完全に後者。歌詞は前者だけど。
どの曲も衛星の様にリードギターがバンドの周囲をグルグル回るんだけど大事な所はガッと寄ってくる。

このアルバムで既に始まっているんだけれど、シングル曲の威力を更に上げるアルバム曲というか、シングル曲が活きるアルバムを作るのが非常に上手い。ベテランかよ。
ど真ん中に配された「You're my sunshineの全て」なんかは前半のウキウキから後半の想いの暴走「STAND BY ME」や猛烈な空回りを「ラストダンス」まで踊っておいて立つ鳥跡を濁しまくりな吐き捨て逆ギレ感すらある「SHE IS BACK」までへの流れを上手く掴んでいる気がしてる。勝手に。僕が。
このアルバムのハイライトはアルバムのコンセプト「デスとラブ」そのものの「DEATHとLOVE」のキレキレのギターから伸びやかなサビで夏にお別れを告げる流れと、完璧な少女に会えたと早々と宣言する完璧なギターロック「STAND BY ME」のリードギター湯浅将平のギターの軽快さと「でぇ〜!!!」という小出くんの歌い方。後は「ラストダンス」で爽やかに終わったと思わせて最後ヤケクソで後ろ髪引っ張り倒す荒々しさすらある「SHE IS BACK」という生々しいまでの10代の未練がましさ。こんなのを1枚目のフルアルバムでやらかすなんて頭おかしい。まだまだそっち寄りの感性のハズなのに自分でその傷グイグイ押し広げて見せてくる感覚にリアルタイムに聴いていた当時恥ずかしくて直視出来なかった。

そんな訳でベボベに教わったのは「アルバム曲の聴い聴き方」だと思っていて、ベテランアーティストをあまり聴かない10代だった僕にそれを教えてくれたのがベボベ
「ライブに行かなきゃ感じられないものがある」と同じくらい「曲飛ばしてばっかじゃ知らないままで勿体無いものがある」というのを彼らに教わった。
だって吐き捨てたあとまた一曲目に戻った時の感覚ったらない。凄いわこれ。
あの日の自分に自己嫌悪含めてイマイチな青春を送っていた事を肯定したい方は是非聴いて確認してみて下さい。あの日の自分がこのアルバムのどこかにいる。
間違いなく。


またー。