身長60cm、身幅が100cm近い巨大なぬいぐるみを買った。
それも予約販売で、店頭で予約票に必要事項を記入して見受けに要する代金を支払ったのは12月中頃だった。
それが今月の中頃、満を辞して我が家にやって来た訳なんだけど巨大な段ボールを前に真っ先に頭に浮かんだ感想が「一体、どんな精神状態でこんな大きなぬいぐるみを欲し、店まで予約へ赴き、15000円ものお金を支払ったんだろう」という過去の自分に対する心配をベースにした困惑と哀れみであった。
勿論、箱を開けた瞬間にそんなものは跡形もなく消し飛び(何故なら大きい分だけ可愛さも大きいから)、その手筈を踏んでくれた過去の自分への感謝に変わったのは言うまでも無いんだけれど、とにかく開けるまでは陰鬱とした感情が支配していた。
12月の自分を振り返ってみると随分な疲れっぷりで、誰も固くなった心身を緩和してくれる訳でもなく、ぬいぐるみの柔らかさに頼ってしまう傾向が強かった様に思う。実際この大きなぬいぐるみの他にも2点ほどぬいぐるみを購入していた。成人男性ぞ。我、成人男性ぞ。尋常でない。
さて大きなぬいぐるみとの生活は程よい距離感を保っている様に思う。
抱いて眠る訳でもなく、愚痴を聞いて貰うでもなく、ただ横に座って本を読んだり、眠る前に目があって特に何も視線に込めず見つめ合ったりしている程度である。
大変愛らしい虚無感を讃えたつぶらな瞳とドライマンゴーの様な嘴を眺めていると妙に力が抜けて疲れがどうでも良い事へ転化されていく気がする。
IKEAだったりコストコだったり京都水族館の大きなぬいぐるみがバズる世の中であるからして、疲れた現代人の中に「大きなぬいぐるみ」という需要は計り知れない。
勿論、ぬいぐるみを迎え入れるということは生き物を飼うのと同等に責任が伴う(洗ってあげたり、干してあげたり、最期は人形供養に出してあげたり)ので多少のハードルはあるかと思うのだけれど、「恥ずかしいなんて思ってることが恥ずかしい」くらいの気持ちでこの子だと思ったら迎えてみてはいかがだろうか。
変われるよ。現に俺は変われた。という宗教勧誘漫画の様な劇的な変化は望めないけれど、家にいてくれると何となく良い感じになる瞬間が多少あり、それは大きいほど増す気もするのでオススメしたい。
映画「えいがのおそ松さん」を鑑賞した。
2期に渡るテレビシリーズの、特に1期がとんでもないヒットになっていたけれど、自分の狙った笑いを取り切る事に狂気的なまでに執着する故にホラーの様な仕上がりになることを厭わない姿勢が凄く面白くて観ていた。単発で常に違う獲物を狙っていたのも印象的で、それをどう劇場版という長尺でやってくれるのか楽しみにしていた。
何か普通にホロっとくる滅茶苦茶良い映画だった。「おそ松さん」の六つ子のキャラクターを最低限知っていれば誰でもしっかり楽しめるし、短編マシンガン構成でなくて1つの話をしっかりやる内容だった。
おそ松さんの笑いの取り方に「繰り返す」というものがあって、これが1回目が一番面白いネタを持って来て2、3と慣れに従って笑いのグレードすらも徐々に下げるというのがある気がしていて、徐々に平熱に近付けた方が次のネタのインパクトが出るからなんだろうなーと思っていて、本作もそれを感じた。ブレない。
やり切って詰め込みきった映画でとても楽しめた。
ニートで童貞なのが良いとは思わないけれど、自己肯定感や承認欲求の理想形ではあると思った。
春の選抜高校野球とプロ野球の開幕戦を短期間に沢山、生で観戦した。
甲子園球場で行われているセンバツは7試合、京セラドームで行われている阪神タイガースの公式戦は開幕戦から3連戦を現地で観ており、特に詰め込んだ日は高校野球を3戦と阪神タイガース1戦を観戦した。
ルートとしては甲子園→京セラドーム→甲子園の往復であった。
どの試合も白熱しており、どちらが勝ってもおかしくない緊迫した試合で面白かったんだけれど、最後に見た智弁和歌山vs明石商業の一戦がドラマチック過ぎて涙が出そうで、それまで重ねた数々の試合が全部ぶっ飛んでしまいそうで焦った。
映画を1日にハシゴすると先に鑑賞した方がどうしても薄まってしまうのだけど、そんな感じだった。
この一戦、かなり押してしまって終盤はNHKですら放送が終わっているという事態の中、極寒の甲子園でラジオを除けば両校とその場にいた観客だけがリアルタイムで立ち会ったクライマックスの凄まじさは劇場型とも言える熱狂で最後の最後、客は総立ちで歓声と絶叫の間にある様な声を発していた。とんでもないものを観せて貰った。
流石に我ながら狂った様に観ているという気もするんだけれど、体力を削りながらも感情を回復させる作業に近いと思っている。インプットではないけれど、感情を解す体操の様な位置付け。
ただ自業自得であるものの疲労の色も濃く、とりあえず寒過ぎて身体がバキバキなので暖かくして眠りたい。
またー。