兵庫県立美術館へハリーポッター展を鑑賞しに行き、ローリングの走り書きのノートを眺めながら「中学生男子の英語のノートみたいな字だな」などと失礼な親近感を抱いた後、閑静な住宅地のロイヤルホストでたまの贅沢とアンガスビーフステーキランチを食べた。
ドリンクバーにしっかり魅入られているのでそちらも注文し、日差しは暖かいけども風が冷たくなってきていることを考慮に入れ、ホットのカフェラテを作ろうとマシンの前で待機していたところ、穏やかそうな老紳士がコーヒーを淹れながらこちらへ微笑みかけながら「ティーソーサーないねぇ」と話しかけてきた。
普段から全くソーサーを使わないタイプなので一瞬何のことか分からず、あたりを見渡したところ普段はマシンの横に積まれているソーサーがちょうど出払っているらしく一枚も残っていなかった。
「ちょうど無くなっちゃったみたいですね」と答えてその場をやり過ごした。
上位ランクと言えどファミレスはファミレスであり、ファミレスのドリンクバーでソーサーを使うなんてどんだけ気品溢れる地域なんだよと思いながら席に戻るついでにそれとなく周囲のテーブルに目を向けると、皆使ってる。
皆ティーソーサーを使って優雅にティータイムを楽しんでらっしゃる。
そりゃティーソーサー無くなるわ。だっておかわりしてる人たちはその都度新しいものを使っているのだから。1人1皿制じゃないんか、自分の家でこれやられたら洗い物に発狂しそうになるがこれがおもてなしってやつなのか、そりゃ食洗機が神器と言われる訳だぜ…と戦慄しながら席に戻った。
ファミレスのドリンクバーでソーサーを使う気品溢れる地域のロイヤルホストは居心地が良いと同時に自分の習慣が正解とは限らないことを思い知らせてくれる素敵なお店であった。
それはそうと、前職の同期から元旦に貰った年賀状の返事を今更書いている。
次の正月の方がもう全然近いのに何をやってるんだと自分でも思っているが、返事として投函したと思っていた寒中見舞いが使い終わって仕舞っていた仕事用のノートから出て来たので慌てて書いている。
出しそびれた寒中見舞いには「今年もお互い良い一年になるといいね。またコロナ落ち着いたら東京に行く事もあると思うし、その時は飲みに行きましょう」と書いてあって、今年一年の結果の全貌もボンヤリ見え始めてしまっているし、コロナは全然落ち着かなかったから東京にも行かなかったしで全く流用出来ないし、そもそも寒中見舞いの文言が印刷された葉書なのでどう足掻いてもアウトという事で適当なポストカードを見繕って書いている。
何か上手い誤魔化しはないかと頭を高速回転させるものの、何故かスギ薬局のポイント5倍デーの店内BGMが脳内で流れはじめ、現在スギ薬局がコラボ中のちびまる子ちゃんをキッカケとして幼少期から慣れ親しんだアニメと言えばランキングの発表会を催し、映えある一位は「悪魔くん」です!おめでとうございます!!まで脱線した所で誤魔化しようがねえと観念して正直に「出したと思ってたら出せてませんでした」と理由を記した。
正直が一番である、というか正直になんてやってらんない世の中だからこそ、こんなしょうもない事くらいはせめて正直でいたいという気持ちになった。
何でこんな事でそんな切ない視点を持たねばならんのか。
元同僚はとても律儀なので普通にまた年賀状を正月に送ってきてくれるだろう。
来年くらいはちゃんと年賀状で返事を書きたいなぁと感じた訳だが、そもそも自分からちゃんと出すという発想に至ってない時点でこれは繰り返すフラグなんじゃなかろうか…と今文章を書きながら感じている。
一抹の不安というか、その不安が百抹くらいあるので真空パックにして粉末緑茶みたいにスギ薬局の店頭に並べたい。ポイント5倍デーに財布の紐を緩められた誰かが買い取ってくれますように。
あと、とある取引先の弊社営業担当さんがわざわざアポイント取って会いに来てくれたんだけども、その理由が商品に関するオンラインセミナーのご案内と議題の要望のヒアリングだったので終始「これもオンラインでやったら良かったんじゃね???」と悶々としてしまった。
セミナーはzoomとか使うのに前段階で普通にわざわざ会いに来る意味とは?とずっと考えてて、仲の良い相手なのもあって帰り際にさも今思いついたみたいな感じで「あ、そう言えば今日のこれもオンラインでやれば良かったですね!」と笑いながら言ったら「確かに!!!!!」って顔して「本当ですね!!!!」って驚愕していて、あまりのド素直さに滅茶苦茶ウケてしまった。
初めてのLINEが届いたか不安で家の固定電話に電話してくるお爺ちゃんみたいになっている。
オンラインを活用していこう、みたいな流れの中でこういう妙なバグというか、これまでの慣習みたいなものが変に残ってしまって軽いボケみたいな機能を果たしてツッコミ待ちになってしまう場面に遭遇すると微笑ましいと同時に気怠さを感じてしまう。
まあ時間が解決というか、徐々にそういうものの数は減っていくと思うので今しか味わえない珍味くらいの受け止め方をするのが良いのかも知れないな、などと思った次第である。
またー。