太陽系の惑星が太陽に向かって直列に並ぶ現象を惑星直列と言うらしい。僕はそれを何故か消耗品がまとめてなくなり、一気に買う手痛い出費を強いられるタイミングで毎回思い出す。
石鹸、シャンプー、トリートメント、化粧水、乳液、制汗剤、洗剤類、日焼け止め、油、コンソメなどなど。
毎月は買わないけど数ヶ月おきにはバラバラに購入しているその商品が何年に一度か、10個ほど同時に切れて買う羽目になるのだが、その時に「惑星直列みたいだな…」と思ってしまう。
随分と生活感溢れる、というか貧乏くさい嘆きを宇宙のロマンになぞらえたものだと呆れてしまう。
各月に分散された出費がまとめて降り掛かる為にお財布的には災難めいており、アルマゲドンのような心持ちにもなっている。物価高よ。
生活感と宇宙的なロマンをないまぜにする名手としてはPK shampooのヤマト・パンクスさんがおり、失礼ながら一方的なシンパシーを感じている結果、今では彼のネットラジオのヘビーリスナーである。
ラジオ番組はロマンもへったくれもない労働への嘆きと部室と喫煙所と居酒屋を行ったり来たりする様な下世話な話ばかりだけども。これが深夜でなく20時に更新されるのだから世の中はまだまだ意味不明である。
そんな彼らの新譜「輝くもの天より堕ち」では生活感と宇宙的ロマンの融合の方が遺憾無く発揮されており、歌詞がとても良い。
曲は彼らのダイナミックさを極端に短い尺に詰め込まれた感じになっており、まだ僕の耳に馴染ませている段階である。
その中で『夏に思い出すことのすべて』の「宇宙船がこんなに揺れるなんてあなたに信じられるかしら 誰に言うでもないさよならが手を振り泣いてるみたい」というフレーズがお気に入りである。
僕はこれを仕事の得意先に向かう為に乗ったやたら揺れる市バスで初めて聴いたんだけど、その状況も一役かって普通に泣いてしまうかと思った。
随分と話が逸れてしまったけれど、消耗品を数年に一度、まとめて買う羽目になってしまった時に僕は宇宙と自身を重ねてしまう。
自分を地球だとすればドラッグストアは太陽系の宇宙空間で、レジに並ぶ他のお客さんを他の惑星に見立て、直列となった偶然を奇跡みたいなものと持て囃す事で出費へのガッカリ感を紛らわせ、PK shampooが聴きたいなぁと思うんだろう。
何かそんな感じ。
あたそさんの本を一気に取り寄せて一気に読んだ。
『「結婚はしない」と決めました。ー結婚はしないで生きていくことを決めた12名の女性たちの決断、幸せ、未来ー』
『「結婚はしない」その先の生き方ー結婚を選択しなかった50代以上の女性8名の結婚観、展望、決意ー』
『喪失と回復』
上記の3冊をネットで購入した。
サブタイトルまで書いたのは内容をここに書くよりもそこを読んで貰う方が伝わるのではと思ったからで、どれも面白いので是非手に入れて読んで欲しい。タイトルのまんまの事を真摯に語り、それに対してあたそさんも真正面から気持ちを綴ってくれている印象だった。
サブタイトルのない『喪失と回復』は人の死など何かを失ってから立ち直るまでのことを色々な人に手記を寄稿してもらう形のオムニバスだった。
勇気を持って歩いて来た人たちの情熱や葛藤に素直に励まされたり慰められる気持ちがある一方で、そんな熱量も必死さも持ち合わせていない自分は結局どうしようかな…とボンヤリしてしまう側面もあった。
やはり、どうにかしたいと自分の足で進めている人たちというのは眩しくて、自分と二次元的には同じ座標にいるようで三次元にすると高低差が違う、みたいな感じ方もある、というか。
それにしても、選ぶと言うのは何かを手に入れると同時に選ばなかった方を失うという事で、結局何にしてもそこにある喪失感をどんだけ手に入れたもので上回っていけるか、みたいな所があると思っている。
今現在、自分は何だかんだやっていけているものの、やっぱり後悔も多いし、これで良かったのかなという気持ちはずっと自分の背後をついてくる。
段々近付いている気もするし、手を伸ばされたら背中に触れられてしまう、つかまってしまうんじゃないかと焦るものの怖くて振り返れない、みたいな感覚でいる。
あたそさんの社会人としての対人関係における憤りについて回る「こんな理不尽で酷い人間にもこの人が良いと選んだ家族がいる」という事実確認は何百回と繰り返してきたし、僕にとってもずっと信じ難い事のトップオブトップとして燦然と輝いている。
物凄く出世していたり、とんでもない難易度の職業や資格を有していたりとか、そんなものは「そういう事もあるかぁ」で容易に片付く。自分にとって理不尽な人間も、別に自分のために努力していても何ら不思議ではない。せめてその何らかの積み重ねの結果で他人に理不尽であって欲しいとすら思う。(勝手な願望だが)
勿論、自分に理不尽な人が家庭でもそうであるとも限らない。オンとオフの場合もある(オフに善人ぶって欲しいけども)
ここまで書いている事は別に切り離せる事ではなく、全部が一本の線の上にある事で、その中で僕が相手の線の「どこからが許せないのか」と言うだけだと解っている。
他方、西加奈子さんの生み出した名言に「許そう貴様も誰かの家族だ」というものがあり、これもまた僕の大切な価値観である。
あたそさんの抱く疑問の先に西さんの言葉があって、皆も大体そうだから大抵はやり過ごせて世の中は回っていく。そんな事をずっと考えていたら感想を書くのが随分と遅くなってしまった。
優しくなりたいし、ありたい。
もっと自分を大切に出来ないといつまでも遠いのかもな、と読んでいて強く感じた。
またー。