性格の悪そうなBLOG

いちいち長いですが中身は特にないです。

今更レビュー:serial TV drama「シリアルキラー」

新入社員が今年も入社してきて、業界的にかなり異例なのだけど女性社員率が50%を超え、これまた異例なのだけど平均年齢も20代をキープしている。
研修室の隣に席を構えている為、研修担当者が多忙の場合は新入社員に解らない事があったら聞くように言ったら仕事はともかく、美味しいお弁当屋さんや音楽的趣向、挙句の果てには女子社員のビジネスカジュアルはどこで買えば良いか、またNGな服装はどういったものかまで男性社員という根本の設定を無視した質問を受けて日々キラキラと輝きながらも緊張で微かに揺れる若さとやらに気圧されてドッと疲れている。
普段スーツの自分にビジネスカジュアルなぞ解る訳もなく、ナチュラルビューティーベーシックとかオンワードとかユニクロとかで何とかして下さい、と言う他ない。無力だ。女装癖があれば力になってあげられたのに...と凹んだりもしたかは伏せるとして私は元気です。

そんな新社会人的には新鮮な毎日を構成する一要素として過剰なまでの日常ドラマチックBGMを提供したい。
2008年に発売されたserial TV dramaの「シリアルキラー」について今回はダラダラ書いておこうと思います。
ギターがあまりにメタルだったりヘヴィだったりハードだったり太過ぎる為にかなり気分を選ぶんだけれど、問答無用で元気方向にスイッチを入れてくれる素晴らしいバンドが僕の中のシリアル像。
ブログのタイトル的にもややこしい人間である自分も、シリアルの様な無駄に熱いし五月蝿いけど愛らしくてストレートな人間には弱かったりする。全然近くないのに大好きなんだよな。例え煩わしくても。


「ガーネット」のスタートダッシュからの「赤いパーカー」はシリアル史上最高傑作だと思う。gingerとかまばゆいとかも良いのだけれど、この曲の破壊力と全部盛り具合には太刀打ち出来ない。伸びやかパート、艶パート、ギター無双パート、ドラムどっかんパート、コーラスパート。全部あって全然無理がない。シリアルの楽曲は全部盛りに盛ってるのに無理が無い凄みがあるのだけれど、その中でも突出して完璧なのがこの曲だと思う。聴く気分によって泣けたりする妙な曲。
そこから「まえぶれ」の伸びやかで清涼感ある伊藤さんの声にハードなギターが鳴ってる様はスピッツに繋がる根底ロックの高揚感があって素晴らしく、大好き。塩顔の文系イケメンが地味にロックテイストなファッション仕込ませて着てるのに気付いてしまった感動に近いものがある。後半のコーラスパートからの情報量はこのアルバム以降のシリアルの方向性そのもの。音自体は点で追うと全くポップじゃないのにボーカルとコーラスがポップに纏めてくれてる。
3曲目にしてクライマックスを迎えた直後に「フィクサー」のシリアスターン。シリアルキラーというアルバムのタイトルの意味に一番近い精神構造の曲だと思う。明るい作風の中で静かに潜み、3分過ぎた辺りからの妙な緊迫感。終わり方もドラムで淡々と。この終わり方凄く良い。

そこからまたスコーン!と明るい「シーフード」「THE DANCE」へ。DANCEなんかは特に80年代というか、親が普通に聴いてた頃のストレートなアグレッシブさがあって太いんだけどキュート極まりない。その大陸バカ騒ぎ系から一転、Jポップサイドに帰ってくる「さよなら」のフジテレビ木曜10時枠のドラマっぽさの後に更に更に深く潜る「そして誰も知らない」は本当は怖いグリム童話のような様な物語。くぐもった様な、霧の中の様なギターとコーラスが幻想的。

スパーンとスイッチを入れ替えるテレビのザッピングに近い「哀愁の逃走劇」はバブリーですらある舘ひろしが出て来てニヒルな笑みでピンチ乗り切るタイプの映画を彷彿とさせる盛りに盛った、縦への突き抜け感。ハンドクラップやサイレンなどかなりバラエティ豊かな添え物にドラムとギターがあくまで重量級。そこからの「宿り」はシンプルながら温かみのあるバラード。MUSEのキャッチコピーに「過剰なまでにドラマチック」っていうのがあったと思うんだけど、このアルバムの構造は本当にそれだな、と。

ここまで来たらパターンがお約束化してくるんだけど、ここから「ペイマニープリーズ」は関西ノリというかアラブの商人っぽい開けたロックで突然始まるまえぶれのセルフオマージュ宴会ロックオペラ。最後の「歩いていこうぜ」はまたJポップサイドに返ってハートフルに終演。曲終わりでループ再生用なのか、謎の音が入ってて、そういう作りもニクいねーと思うけど繋がり方は微妙で微笑ましい。

ここまでストレートにハードロックもJポップも貪欲に網羅してくるバンドの熱量は受け止め方が解らないというか、冷静さを良い意味で失わせるなぁ、と聴く度に思う。ボーカルの伊藤さんとギター新井さんの温度差が良い意味で真逆だったからこそのバランスで、伊藤さん脱退以降は新井さんサイドが目立って、新井さんのギターも凄く好きなんだけど聴けなくなった。僕の中でのシリアルは伊藤さん脱退で終わった。そんなドラマの終わり方も、まあアリだと思うのです。

こういうバンドはチラホラいるけど、ここまでの水準でサラっとかましてくれるバンドはいない訳で、やっぱり凄い人達だったんだなぁ、としみじみ思う。作品を世に放ってくれたら、いつまでもそれに触れる事が出来るから好きなアーティストには一枚でも多くリリースして欲しいなぁ、とこれを書きながら思いました。

serial TV drama - 赤いパーカー - YouTube

またー。