性格の悪そうなBLOG

いちいち長いですが中身は特にないです。

「blank 13」の感想になってない感想。

3月9日はレミオロメンの「3月9日」を思い出すんだけど、今年は「これが藤巻さんが『サンキュー』って仮タイトルつけててスタッフがマジでヤベーと語呂合わせ的に考えたタイトルが『3月9日』だったらどうしよう」となり調べるのも怖くてそのままそっとしておくことにした。歌詞の感謝の仕方をカジュアルダウンし過ぎだろ。絶対そんなことないだろうけど、万が一語呂合わせ的に生まれたタイトルだったら今後真っ直ぐ聴けないかも知れない。

 

そんな一日の終わりに映画「blank 13」を観た。

予告編を初めて映画館で観たときに、嫌な予感がしていてどうしようかなと思ったんだけどちゃっかり前売り券を買って観に行った。

世は空前の高橋一生ブームで、まあそれもウォレットチェーンと革ジャンと羽生結弦と千のプーさん(革ジャンを着たチバユウスケが千のタンバリン風にプーさんを「黄色いアイツ」と呼ぶところまで妄想した)を前に若干落ち着いた気もするけれどそこで下車してしまう程度のライトな愛情を、自分でもどこかでそうだろうから否定出来ない。ただ自分でもどこかでそうだから笑ってしまえるんだと思う。

このカード社会にウォレットチェーンってまだ有効なのだなという感想である。高校生の頃、定期と3千円しか入っていない財布をウォレットチェーンに繋いで夏祭りへデートに行ったらあったその場で外せと言われたアイツは見る目がなかったんだろうか。それとも高橋一生だから許されるだけなんであろうか。

ちなみに社会人になり、当時も手放した今でさえもお気に入りのTシャツを着て行ったらその後「あのTシャツ、本当にダサかった」とあらゆるタイミングでdisってくる女性と結婚した。その場で言うか後々言うかでこうも結末が違うというのだから人生解りませんな。

ハッキリ言って未だにdisられる度に「未だにdisんのかよ」というのと「あれ未だに気に入ってるんですけど」というダブルパンチで腹が立つし、そんなことで未だに腹がたつ自分にも腹が立つ。

blank13」はそういう映画だった。

 

 ネタバレは極力避けたいのだけれど、恐らくしてしまうので観る予定がある方や自分の感想以外許せない気質の方はまたどこかでお目にかかりましょう。

 

冒頭に書いた「嫌な予感」というのは、自分の家族を取り巻く環境がblank13と同ジャンルのテーマ違いという代物なのではないだろうかというもので、それはもう見事に当たってしまった。

奔放な祖父は祖母や僕の親とその兄弟を振り回して大変な苦労をかけた挙句に宗教を出禁になり、最後は彼女に遺骨を持ち逃げされる始末。その祖父をキッカケに関係が悪化した親の兄弟は僕の結婚式だけでは飽き足らず祖父の葬式までも揃わない。

だから本当に腹が立つし、どいつもこいつも揃いも揃って一生許さないだろうと思う。

思うんだけど、やっぱり良い思い出もいっぱいあるし、きっと亡くなると辛くなるだろう。祖父がそうだった。

葬式について僕は常々卑怯だと思っている。

そこに集うのは何だかんだ言ってその人を好きな人ばかりで、素敵なエピソードが集まってくる。んなもん知らんがな、死ね、死んだるけどとなりたいけど、相手は全くその通り死んでいる上に周囲もなんか「今日くらい許してやんなよ」「死んだんだから終わりになさいよ」という空気になる。お前ら死んだ人間に優しくする前に生きてて仲の悪さに心を痛めている僕の母親に優しくしろよと思わずにいられない。

でもそう憤りながらも自分の中にも祖父との良い思い出があって、しかもエピソード聞いてると「あーやりそうだな」とか思って微笑ましくなってしまう。

そして結局何にも言えずに黙ってお供え物の果物を貰って帰るんである。祖父が糖分を吸っていったのかどれも中途半端に水っぽくてガッカリする味だったのをよく覚えているし最後の何個かは腐らせてしまい捨てた。美味しかったらもう少し印象が薄まるだろうに、最後まで祖父はズルい。

blank13は、13年のブランクを必死に生きて徐々に平穏を取り戻した家族と、13年変わらないまま生きて勝手に呆気なく死んだ父親の話で、どこか他人事でない物語だった。

勿論、僕は劇中の様な苦労をしていないので熱烈共感とか言えないんだけど、ボンヤリと39度の風呂に入っていて隣にいる知らないおっさんに「なんかぬるくないすか?」「あーわかる」みたいな感じの共感を受けた。

そのボンヤリした部分がことごとくタバコの煙で上手く現されていて、煙というのは実にズルい、掴めないものを掴めないものとして掴めないまま表現しきってしまうんだなーという気持ちになった。

画の明度と彩度の雰囲気がお洒落を素通りして生活感という感じで、どことなくホームビデオの様にもアルバムの様にも感じ、過去の回想と現在が別々に暮らしてきたのに繋がってるんだろうなと思った。

高橋一生の戸惑い方や苛立ち方がたまらなかった。

最後、母親が吸ったそのタバコはまさか、まさかと想像を煽ってちょっと涙が出た。

あと、テーマ曲があんまりに良かった。

 

滅茶苦茶面白かったよ!と人に言える感じじゃないけど、人が暮らしたということは何かを遺すんだということをただ普通のテンションで言ってくれる良い映画だった。

葬式コントは受付の導入から高橋一生の挨拶というオチまで、あの実際の葬儀に付き纏うムズムズとした笑いをねーよという手を使ってあるあるという親近感に変えてくれた気がした。

だから全然派手じゃないしドンデン返しとかないけどちょっと優しい気持ちになれるの好きな人は観たら良いと思う。

 

喪服姿の金子ノブアキも拝めるし。

 

またー。