性格の悪そうなBLOG

いちいち長いですが中身は特にないです。

選挙では8手先を読もう。

予告編を観て上品で気高い高齢者のアウトレイジかなと気になっていた「教皇選挙」を観に行ったら割とそんな感じで面白かったので感想を書きたい。このところ毎週のように映画を観ており、順調に衒学的おじさんの映画ブログのような風貌になりつつあるけど、とりあえず大雑把に分別したらその箱に入っているだけで映画の様式美とか過去の名作との関連とか製作陣への造詣みたいなのが全くないので本物たちから箱を追い出されてしまいそうだなと思っている。
どこにも行けない宙ぶらりんな人間。mixi2で柔らかく平和なコミュニケーションでは刺激が足らず、かといってXの強さと大きさにこそ最も輝くレギュレーションにも対応し切れず、あわあわしながらブログに書いている次第である。
教皇が亡くなったことで新たな教皇を決める選挙を執り仕切る事になった主人公ローレンスを軸に各国の候補者たちの策略や疑惑が次々と波乱を起こす物語は高齢者及び職業故のゆったりした動きすらも不穏さを煽ってとてもスリリングだった。
世界最古の家長制度とも言われるカトリック教会におけるジェンダーや人種に対する偏った認識を伝統から見直すべき価値観へ位置付けを変えていく難しさなんかも描かれていて、実際カトリックに限らず日本を含めて世界中の社会でまだまだ根強い差別について考えさせられる映画だったと思う。
ここからはネタバレ含めて雑感を書きたいので、ちょっとスクロール避けの文章を挟みたいんだけど、公開2日目に観に行って、小さめのスクリーンながらレイトショーを除いてどの回も空席が数えるほどしかなく、楽しみにされていた方が多いんだなと嬉しくなった。パンフレットに投票用紙が入っていたらしく、買えば良かったなぁと後悔した。

そろそろ雑感を述べていくと、まず選挙の有力候補が中々に曲者揃いで良かった。
アフリカ系やアジア系の信者が増える中で、その地域から教皇の候補に名乗りを上げる事自体から否定したがる保守派のテデスコや候補者の過去を利用して失脚を狙い、ロビー活動にも力を入れまくる政治家のようなトランブレが分かり易く権力に拘っているいやらしさがあるものの、個人的に一番こいつキツいなと思ったのはローレンスの友人のペリーニだった。
選挙前の下馬評では最有力とされていて、さも野心なんてありません、私などが勤まりますでしょうか、色々な方を受け入れていくことが信仰ですよねというスタンスでいたのに、トランブレのロビー活動やアフリカ系候補者の躍進なんかで簡単に覆ってしまってからは余裕もなくて凄く嫌な奴になってて笑ってしまった。主張の近いローレンスと票を分け合う展開になった事で自分を応援してくれているにも関わらず八つ当たりまでしていて、滅茶苦茶嫌な感じだけど気持ちがわかってしまうので同族嫌悪みたいな感覚で見守ってしまった。
それにしても亡くなった教皇が何枚も上手で上記候補者たちがまだまだ及ばない事がクライマックスに出揃った事実から導き出されて「うわぁ…8手先を読むってこういうことか」と序盤のチェスに対するセリフを思い出して唸った。(ネタバレ公式解説にも書いてあったので珍しく正解した)
目をかけたローレンスが信仰に悩んでいるからこそ選挙の執行人に任命して繋ぎ止め、問題のある候補者たちを落とすためにスキャンダルの情報を流し、それを妨害する為の工作を図った候補者も潰し、行き過ぎた保守派を復権させない為に多様性を体現する候補者を秘密裏に擁立して当選させ、役目を全うする事でローレンスにも信仰を取り戻させる。
計画通りにもほどがあるやろ、と恐ろしくなった。
ローレンスが信仰心を取り戻したのを投げた亀を池に戻す描写に重ねたり、シスターたちが楽しそうに外に出て来る姿に「これからは開かれた信仰を目指したいね」みたいな選挙結果に沿った希望の光が射すような終わり方だったりが凄く良かった。
教会建築の美しさだったり法衣の美しさ、キャラが強く感じられる食事のシーンとタバコの吸い方など、ミステリアスだけど大量に情報を投げてくれる丁寧な映画だったと思う。


またー。