性格の悪そうなBLOG

いちいち長いですが中身は特にないです。

哀れながらも完璧な日々、全米進出。

先週の金、土、日に色々観たので雑感を書いておきたい。

映画の「哀れなるものたち」「PERFECT DAYS」と配信トークライブ「コントで全米進出企画会議」について、映画は極力ネタバレしないように、トークライブは内容にも少し触れながら書くので、設定すらもネタバレしたくない方は読まないでいてくれた方が良いと思います。

 


【哀れなるものたち】

先行上映で観た。

R +18というレイティングが何故なのか解っていなかったけど、楽しめたらいいなと予約した。結果、レイティングは余りに性行為が熱烈ジャンプ(強烈ジャンプだったかも)な為だった。

自殺した妊婦の死体の胎児が生きており、その脳を妊婦に移植して蘇生させるという天才医師によるとんでもない野望の実現により生まれた女性が主人公で、胎児の脳を移植されたことで知能が赤子の状態から始まり、どんどん知識を増やして成長していく中で外の世界を見て経験を積みたという思いが膨らんでいく。

医師により家の中に閉じ込められて育った彼女が医師の弟子と結婚する為に書類作成を依頼された弁護士に連れ出され、旅していく中で彼女が知った自分自身と世界とは、という物語だった。

性的快感など身体的な刺激に真理を求めたり、世の中の残酷な仕組みであるとか社会における意義を熱意に突き動かされて探究したりとどんどん成長していく中で、タイトルの「哀れなるもの」を指す対象が主人公、資本主義、男社会、観客にまで移り変わっていく様な印象があって何度も驚かされた。2時間そこらで人間の成長を振り返りみたいな。

それは主人公がどんな状況で、何にぶち当たっても自分で正しいと思うことを選んで主張し続ける姿がそういうものを浮き彫りにしていく様が引き起こす感覚なんだろうなと思った。

周りの人たちも彼女に惹かれる事で身を滅ぼしたり、大切なものに気付いたり変わっていくのが印象的だった。自分という人間も影響を受ける側の割合が大きいから解り過ぎる故に結構ショックだった。

ファッションやセットにも驚かされたけど、急に魚眼レンズだったりモノクロアイキャッチなんかで区切られたりする構成も独特で面白かった。

とは言え性行為が凄まじくストレートなのでマッチングアプリの映画好きでマッチしたばかりのカップルとか、家族とかで観に行くのはちょっと覚悟した方がいいと思った。

その辺りで人に勧めにくいのもあるんだけど、その性的な表現があるからこそより成長が見えてくるのでその衝撃をたくさんの人に味わって欲しいと見終わって一番に感じた。

 


【PERFECT DAYS】

トイレ掃除を仕事にする男の淡々とした日常を映した作品だった。

寡黙な男が日々のルーティーンに忠実に暮らす。

起きるタイミング、植物の世話、テープをかけるタイミング、退勤後の楽しみ、休みの日の過ごし方までルーティーンに沿って生活するのは世の中から結界を張って居場所を作り自分の感性を守っている様な姿が印象的だった。

社会の中で真面目に黙々と働き、思いやりがあり、自分の暮らしを大切にする中で周りもそういう穏やかさを慕ってくれるというのは実際にあると思うし、そういう人たちがお互いに少しずつ影響し合う事で出来上がる穏やかな普通の1日というものの素晴らしさを改めて感じる作品だった。

一方で色々な責任を負わずに暮らす故の人間的な幼さを垣間見たり、それに対する自責の念の様なものも色濃く出る瞬間があってゾッとした。

追いやられた暮らしではなく、選択して切り捨てたものへ罪悪感を持っているのは逃げを自覚しているからだと思うので自分もこういう流れがあり得るのではと思うと怖くなってしまった。

穏やかで淡いんだけど確実に光と影があることも感じられる繊細で美しい映画だった。

音楽が滅茶苦茶良くてロードムービーみたいな雰囲気もあるのでそういうのが好きな人にオススメしまくりたい。

 


【コントで全米進出企画会議】

ゾフィーの上田さんがシカゴで活動するコメディアンのSaku  Yanagawaさんにアメリカのコメディ事情を教えてもらうトークライブで、進行をカルロス矢吹さんが担当してゲストに吉住さんという編成だった。

アメリカのお笑いってどういう感じなんだろうという興味の一点突破で1700円くらいの料金を払うのはハードルが高いかもと思っていたけど、ジャンル的に身近な割に全く気にしなかった事が視界に入ってきてしまってからずっと気になってしまったのでチケットを購入した。

そもそも上田さんがアメリカ進出を企むに至ったのかというと、サタデーナイトライブという番組(毎週土曜の深夜に放送されているコント番組)の制作過程を知ったというのが大きいと仰っていた。

その流れは月曜にネタ出しを行い、火曜から制作、土曜の本番前に客にネタ見せを行い反応に対してブラッシュアップをかけ、深夜の放送に挑むというもので、上田さんの理想である「コントだけで生活出来る」が現実に行われていると知ってそのスタイルを本気で目指したいとなったとの事だった。

自身のコントに字幕をつけたものをアメリカのコメディアンに観てもらった結果、想定していたよりもお笑い観が日本のそれと乖離がなく、調整でいけるのではと感じた為、より現実的な目標となったと話されていた。

実際にシカゴでスタンダップコメディアンとして活動しているSakuさんによるアメリカのお笑いの分類も興味深かった。アメリカのコメディのジャンルには大きく分けて①スタンダップコメディ(マイク一本で立って喋る)②スケッチ(日常を切り取る、コントする)③インプロ(台本はなく、客からもらった場面や設定のお題で即興を繰り広げる)の3種類があるという事で、日本人で英語力のハードルが高い場合は作り込んで持っていけるスケッチが強いのでは、という分析をされていた。

この3種類を全てやっているコメディアンは少なく、スケッチとインプロの組み合わせが多いとのこと。印象的にスタンダップは一人で性格を強く打ち出す、スケッチとインプロは協調性が求められる表現なので向き不向きがありそうだなと思っていたらそういう話もされていて納得が深まった。

スタンダップについて日本のような養成所は無いけれど、スケッチやインプロはコミュニケーション能力を培うスクールが授業として取り入れているのが日本での養成所に当たるのではという。そこではコミュニケーション能力を高めたい社会人だったり、移民の人たちが語学的な側面でも笑いを通して学ばれている様で、すごく社会進出に意欲の強いアメリカっぽい、職業として芸人を目指すのとは違うルートだなと感じた。

あとはアメリカのコメディには「その人が言う事で新しい視点を提供出来る」「誰がやっても面白い事ではなく自分にしか言えない事」が評価されるというのが印象的だった。

差別的な表現にはかなり厳しいという風潮もありつつ、説明として聞くとマイノリティがマジョリティを揶揄することにはカウンター的に寛大な印象も受け、それが個性なのかどうかは日本にいるとわからない感覚かも知れないし、実際にネタを観たらそこまで小難しくなくただ人のルーツや文化や常識に傷をつける行為を自然と遠のけているのかも知れないと思った。

遡るとスタンダップにおいてもボケとツッコミが存在したが、ボケの常識からズレた言動をツッコミが正して共感を得るというスタイルが多人種国家として発展していく中でどんどん通用しないというか違いがあって当たり前なので不要になってしまったということも語られていて、日本とは真逆の進化を遂げてきた事がよく伝わる話だった。

基本姿勢として、かなり意義を求められるので日本のお笑いと全然違うけれど、どちらが不自由かというよりもどちらがより他者に誠実なのかというのは人によるのかなと思うので、アメリカのコメディの方が面白いと感じる人がいるのも解るし、僕も興味が湧いてきた。

その他、劇場のシステムや具体的な活動スケジュール、日本のお笑いとの作品の差なども言及されていて興味深かった。ノートに6ページ、みっちりメモを書いたので何となく読み返してはニヤニヤしている。

今後の活動も楽しみに待ちたい。

26日(今日)まで配信されているとの事で、折角だし見返そうかなと思っている。

 


今年も興味が湧いた作品にどんどん触れていけたらいいなと企んでいる。

 


またー。