性格の悪そうなBLOG

いちいち長いですが中身は特にないです。

歯医者に行っただけの日記。

親不知が虫歯になっている、と会社の歯科検診で診断され、あまりの怯えにその日のテンションがガタ落ち、部下に「親不知ごときでそんな世界の終わりみたいな顔されても」と苦言を呈され、セカオワの人気曲を延々と聴きながら過ごしてメンタルを冒険者めいた領域に持っていって何とかオンラインで歯科の予約を果たした。
ここ数年でネット予約が普及していて良かった。これが電話で予約しなければいけなかったら更に先送りしていたかも知れない。
親不知のエピソードで周囲からもたらされるものは大概が難易度の高い治療となったというパターンばかり。
切開した、砕いた、通常の歯科では対応出来ず大学病院の口腔外科に紹介状を書いてもらった、本気を出したリスくらい腫れた、感染症にかかり高熱が出た、抜糸で泣いたなどなど、チェンソーマンにおける親不知の悪魔はゾウの悪魔やトマトの悪魔を凌駕する力を保持しているだろう。
平和なエピソードを聞かないので当日まで最悪のパターン(紹介状を書かれ、オペの結果パンパンに顔が腫れ、膿んだ上についでに熱も出る)を想定することで診断のショックを事前に和らげようと必死になりながらマジで物理的に震える足で予約した歯科医院の敷居を跨いだ。
席について真っ先に先生に伝えたのが「何回通えば治りそうでしょうか」だった。並々ならぬ覚悟、絶対に親不知を倒す、虫歯を根絶するのだという前向きな姿勢をしてやがる、と先生に見せかけるもとい見せつける事が出来た。
最初が肝心、力強く握手することでハッタリでも精神的に優位に立つという事である。
そしたら先生、のんびりした優しい声で「あ、大丈夫です。今日抜いちゃいますねー」と返してきて、今日抜く所までの行くという心の準備が全く出来てなかったので「今日いけるんですか?」と掠れ切った声が出てしまった。
もう完全にただビビってる奴にしか見えてなかったと思う。
簡易なレントゲンで確認して「ちょっと根本まで写せなかったんですけど、大丈夫そうなんでやっちゃいますね」と言われ、写ってないところがエグい形してたらどうするの!!!?と思ったけど素人が言える訳もなく、麻酔を打って体感10分でグググと力をかけられ、本当にこんなんで抜けるのか?僕の歯が?無理じゃね?だって親不知だよ?チャットモンチーの歌詞に登場出来るワード界の猛者だよ?と半信半疑でいると、先生がふう、と一息つくので、ほら!無理だったでしょ!そんなねぇ、「抜けましたよー」抜けましたね!!??抜けてました。歯医者さんってマジで凄い。
何回も通うことを覚悟したのに一回で済んでしまった(厳密には親不知と接していた歯が軽い虫歯なのでその治療には来るが)ので良い方向で計画が全崩れとなった。
先生曰く、とても素直に真っ直ぐ生えていたのですんなり抜けたとの事で止血用のガーゼを噛まされてあっという間に終了した。
まあ、親不知の生え方が素直なのは僕自身が余りに素直だからその影響だと思うし、簡単に抜けるのもこれまた人に迷惑をかけまいとしがちな自分の生き辛い性格が影響しているからなぁ、と会計を待ちながら考えていた。痛み止めと化膿止めの薬の処方箋を出して貰ったので薬局に行くと、子供の患者さんの為に古びたテレビでトムとジェリーを延々流している薬局で、たまたま大人しかおらず、しかし全員が死んだ目でテレビに釘付けになっていて異様な雰囲気だった。
皆、症状に消耗し、医療費3割負担(で済んで有難い話ではあるが)に打たれ、現実から逃れたい一心でアニメを観ているのに、画面の中ではトムが完膚なきまでにジェリーに痛めつけられており自身と重なってやいないかと心配になる。
何てものを患者に観せるんだこの薬局は、と思いながら郷に入っては郷に従えと画面を眺めていると、自分を遥かに超えるダメージをトムが受けており、度を超えた仕打ちに自分の症状など軽いものだと思え、しかも自分より滅茶苦茶な目に遭っているトムが諦めずに立ち上がる姿に自然と鼓舞されてしまった。毒も薬になるとでもいうのか。
それにしてもトムとジェリーしかり、カートゥーンは予想出来る展開になるのにちゃんと面白いから凄いな、と感心してしまった。
結局、処方された化膿止めだけ飲んで、顔も一切腫れず、血もさほど出ず、痛み止めの出番もないまま過ごせている。
しかも眼精疲労が原因と思われていた慢性的なこめかみ辺りの張りと凝りも1/3程度に軽減されており、大半が虫歯由来の症状であったのではと思われる。
まさか虫歯だけでなく目の疲れも癒してくれるなんて、本当に有難いし凄い。
もしかしたら歯医者さんは魔法使いか何かなのかも知れないと思った。ホグワーツにいそうな格好してるし。
コロナで絶たれた以降、面倒になって通っていなかったけど、定期的に歯医者には行った方が良いと改めて身に沁みた出来事だった。

加えて、世の中にある親不知エピソードが不幸なものばかりなので僕はすんなり抜けた事をアピールし続ける事でちょっとでもプレッシャーを軽減したいし、でも苦戦してしまった人に「言ってた事と違う!」と苦言を呈されるのも嫌なので、聞かれた時だけ僕の場合は、と前置きしてアピールしていきたいところである。


またー。